「バーグマン、ヘップバーン、チャイコフスキー、ピカソが中之島で夢の共演!」・・・さて、一体なんのことでしょう?実は、これらはすべて中之島に咲くバラの名前です。5月の中之島はこれらの著名人ならぬ著名バラが咲き誇り、まさに百花繚乱の眺めが楽しめます。今回は、バラ園を訪れる方により楽しんでいただくべく、園内のバラの品種やその名前の由来をご紹介します。ちなみにバラ園には、自動販売機やカフェもあるので、飲食についてはそれほど心配する必要はありませんが、日陰が少ないため日焼け止めや日傘、あるいは帽子などのアイテムが必須です。では、カメラを携えて、いざ、中之島バラ園へ!
【上】バラの小路【下】ピエールドゥロンサール
1.バラの小径(こみち)のバラ達
東洋陶磁美術館横のバラの小路の入り口、雰囲気ある煉瓦の門に這うのは「ピエール・ドゥ・ロンサール(Pierre de Ronsard)」。「バラの詩人」と言われたフランス・ルネサンス期を代表する詩人ロンサールにちなんで名づけられたバラです。
道を挟んで右(南側)には、ドイツ語で「白雪姫」の意味を持つ「シュネーヴィッチェン」が植えられてます。別名は「アイスバーグ(氷山)」。名前によって花の印象が随分違います。 すぐお隣の「マダム カロリン テストゥ」は19世紀末に活躍したフランス人のファッションデザイナーの名前。彼女のプロモーションの一環として命名されたそうです。バラの名づけが広告塔として活用されていたんですね。
人名だけでなく、色や香りから食べ物(スイーツ)や飲み物(お酒も♪)を連想させる名前がつけられたバラも多くあります。
例えば「アプリコット・ネクター」。「ネクター」は日本の某果汁飲料水を連想させますが、実はギリシャ神話に出てくる神々のお酒「ネクタル」が起源となっています。「バタースカッチ」はまさしくバターのような柔らかい色合に甘い香りがぴったりのネーミングです。 南方のエキゾチックな雰囲気が漂うバラは「スパニッシュビューティ」。カラフルなひだの花びらがフラメンコの衣装のようです。
【左:荒城の月】【中央:バタースカッチ】【右:スパニッシュビューティ】
【上】バラ園(西側)【中】イングリット・バーグマン
【下】マリア・カラス
2.バラ園(西側)のバラ達
難波橋を渡ってすぐの南西側に植えられているのは「イングリット・バーグマン」。「カサブランカ」などの作品に出演した往年の大女優ですが、1982年67歳で死去した後、この名が冠せられました。決して名前負けすることなくゴージャスに咲き誇っています。
「イングリット・バーグマン」の隣人、「ジーナ ロロブリジーダ」もイタリア出身の女優さんだそうです。彼女は、2013年現在御年85歳になられてもご健在の様子。イタリア女性を彷彿させる陽気な雰囲気のバラです。
そしてその隣に咲く「シャンティ・ロゼ・ミサト」は、歌手の渡辺美里さんに捧げられたバラ。「バラ色の歌」という意味だそうです。 さらにそのお隣は16代アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンの名前を持つ「ミスター・リンカーン」。男性の名前をつけられたバラは珍しくはありませんが、芸術家の名がほとんど。政治家というのは少ないかも。
また、20世紀最高のディーヴァ(歌姫)と呼ばれたオペラ歌手、「マリア・カラス」の名を冠したバラもこのエリアに咲いています。華々しい栄光と、スキャンダルで世間を賑わせ、謎の死でもって享年56歳で散っていった様(さま)は、まさに花の命の短さにたとえられます。 「リリー・マーレーン(リリー・マルレーン)」は、第二次世界大戦中のドイツ兵の間で流行った歌のタイトルです。女優のマレーネ・デートリッヒが歌い、日本でも有名になりました。聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。
そのドイツ軍の秘密警察によって捉えられたアンネ・フランクの庭に咲いていたといわれるのが、すぐ近くに咲いている「スブニールトゥアンネフランク」。愛でるだけでなく、歴史を刻むために名づけられたバラです。 このエリア、西側には日本作出の品種がずらりと植えられています。「しのぶれど」「高雄」「桜貝」「花がすみ」「聖火」「そどおり姫」「熱情」「芳純」・・・日本人だからこそそのバラに込められたニュアンスが伝わってきて、まさに言い得て妙、と感心。
【上】バラ園(東側) 【中】ミセス・PSデュポン 【下】マサコ
3.バラ園(東側)のバラ達
ばらぞの橋を渡ってすぐ目についたのが、アーチに這うつるバラ「ミセス・PSデュポン」。世界屈指の大企業、デュポン社が由来となっており金色に輝いています。
そばに咲く「マサコ」は皇太子の御成婚の翌年、雅子妃殿下にちなんでつけられたそうで別名「エグランタイン」といい、こちらは「セーブ・ザ・チルドレン」を設立した慈善家の名前だそう。
デザイナーとして有名なウィリアム・モーリスとチャールズ・レニー・マッキントッシュの名を冠したバラも、近くに仲良く並んで植えられています。
そばにある「ジェントルハーマイオニ」は、有名なファンタジー映画のヒロインの名かしら、と思ったのですが、元祖はウィリアム・シェークスピアの戯曲「冬物語」の登場人物の名だそうです。 「メアリー・マグダレン」は、聖書に出てくる「マグラダのマリア」を英語表記したもの。なるほど~。 画家である「アンリ・マティス」や「エドガー・ドガ」、作曲家の「チャイコフスキー」、「ヨハン・シュトラウス」の名も発見。「マッカートニー・ローズ」は、ビートルズのポール・マッカートニーから名づけられた香り高いバラです。
今回の散策では、「バラ」とひとくくりに呼ばれているものの、実にたくさんの種類があり(紹介したのはほんの一部です)、それぞれの花に個性があることに驚きました。みなさんも、ぜひ中之島に足を運んでご覧になってくださいね!
【左:フレンチレース】【中央:ダイアナ プリセンス オブ ウェールズ】【右:アプリコット・フレグランス】
(2013年5月)
アクセス
地下鉄・京阪「淀屋橋」駅下車徒歩5分
地下鉄・京阪本線堺筋線「北浜」駅下車徒歩5分
連日厳しい暑さですが、川辺を歩くと川面を滑る風が心地よく、周辺よりも少し涼しい気がしませんか?そこで今回は、都会の真ん中で、涼しげに楽しめるアクティビティとして「水上さんぽ」をご紹介します!
「水上さんぽ」は、水上さんぽ実行委員会アクアスタジオ※が実施されているアクティビティです。2009年、都心の水辺の魅力を知ってもらうため、公共の水辺施設(船着場や雁木等)を有効活用した水辺体験イベントとして大阪市の協力のもとスタートしました。水上さんぽは、スタンドアップパドルというサーフボードによく似たボードと背丈より長いパドルを使います。ボードに乗ってゆったりと水面を散歩するので、風や景色を普段と違った視点から、じっくり楽しむことができます。
水上さんぽには、親子参加や夜景を楽しむなど様々なイベント・コースがありますが、今回ご紹介するのは堂島川の鉾流橋からばらぞの橋を往復する体験コース(約1時間30分)です。道具や安全装備は全てレンタルでき、基本動作をレクチャーしてもらえるので気軽に挑戦できます。集合場所は、天満警察署や弁護士会館のすぐ近く、中之島ベースです。ここで申込み手続き(要事前予約)と着替え、荷物を預けます。準備が整ったら、ボードを近くの若松の浜まで運び、レクチャーを受けます。
レクチャーは代表の奥谷さんから教わります。 乗り方・降り方、立ち方、漕ぎ方などの基本動作だけでなく、堂島川など中之島を流れる川のお話も聞くことができます。
この日は、天神祭り直後ということもあり、若松の浜で行われる鉾流神事のお話などが聞けました。
ひと通りのレクチャーが終わるとライフジャケットやひざ当てをつけ、 堂島川へ繰り出します。最初は座って漕ぐ練習から。緊張の中、みんな恐る恐るで出発です。奥谷さんを先頭に歩く 程度のスピードでゆっくり東へ進んでいきます。時々通る船の曳き波にはドキドキでした。
少し慣れてきたころにはバラ園に到着です。ばらぞの橋周辺で旋回や立つ練習を行います。 レクチャーのおかげか、みんなスムーズに立てました。
今度は立ったままばらぞの橋の下をグルグルと回ります。奥谷さんによるとバランスを崩して落水する方は、 100人に1人くらいだそうで、この日も誰もいませんでした。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、記念撮影をしたら若松の浜に戻ります。
帰りは、立てる人は立ち無理のないよう進みます。戻ったら、自分の使ったボードとパドルを洗って終了です。
体験コースの感想ですが、ひと言でいうと気持ちいい全身運動でした。
この日は朝から30℃越えの夏日で川の臭いの心配をしていたのですが、臭いがほとんど気にならないのに驚きました。泳いでいる魚も何度か見え、都会の川=汚い・臭いというイメージが崩れていきました。
また終わってみると不安から足に変な力が入っていたのか、ももがピクピク。内ももが筋肉痛に。腕もだるくなっていて運動不足を実感・・・。
パドルボードはゆったりとした見え方と違って全身運動でした。水上さんぽは一年中実施しているそうで、冬の夜景めぐりは格別だそうです。そのころまでに上達したいな~と思った大満足の初体験でした!
奥谷さんによると、パドルボードは都心の穏やかな川だからこそ気軽に、安全に楽しめるアクティビティなのに、都心で楽しめるのは世界的にも珍しいそうです。 最近、東京でも始まったそうで、今後ブレイクするかも。
(※2012年6月に取材・掲載した記事です。アクアスタジオ→日本シティサップ協会に名称変更)
水上さんぽ実行委員会 アクアスタジオ (日本シティサップ協会に名称変更)
所在地
大阪市中央区南船場2-7-14 大阪写真会館3F(事務局)/大阪市中央区北浜東1-2 川の駅はちけんや
江戸時代に懐徳堂や適塾が作られ、古くから学びの地だった中之島界隈。その精神は現在も受け継がれ、中之島エリア各地で開放的な学びの場が開かれています。今回は各スポットで実施されるプログラムに参加して、その雰囲気を味わってみたいと思います。
【 21世紀の懐徳堂。淀屋橋odona「アイ・スポット」 】
プログラム参加の前に、淀屋橋odonaへ。旧大阪市立愛日(あいじつ)小学校跡地に建つ淀屋橋odona。その2階にある「i-spot(アイ・スポット)」は大阪市のまちづくりに関する情報発信スペースです。
壁面には懐徳堂や適塾の資料も展示されています。懐徳堂は大坂の町人によって1724(享保9)年に創設された学問所。塾生は武士から庶民まで幅広く、遅刻や早退も自由だったそうです。一方、1838(天保9)年に登場した適塾は、緒方洪庵が開いた蘭学塾。談論風発の気風は幕末の潮流の中で福澤諭吉をはじめとした多くの人材を輩出しました。この懐徳堂と適塾が、現在の大阪大学の源流となっています。
実はアイ・スポットも学び空間のひとつ。懐徳堂で尊重された“学び合いの精神”を受け継ぎ、「大阪大学21世紀懐徳堂i-spot講座」という無料講座が行われています。今回は残念ながらスケジュールが合いませんでしたが、いつか参加してみたいなぁ!
【 なにわ橋駅の地下「アートエリアB1」でラボカフェに参加! 】
日も暮れてきたところで、京阪中之島線なにわ橋駅の地下1階コンコースにある「アートエリアB1」へ向かいました。
アートエリアB1では「ラボカフェ」という無料プログラムが毎月5~6本、さまざまなテーマで実施されています。本物のカフェのような照明やソファが配されているせいか、通りがかりの人が何だろう?と気軽にのぞき込めるようなリラックスした雰囲気ですね!
「ラボカフェ」は大阪大学が社会のさまざまな組織とコラボレーションしながら、テーマに応じた研究・開発を繰り広げるプロデュース事業。そのプログラムの一つであるオルタナティブカフェは、日々の暮らしを主に文化の視点から見直し、人間の豊かさとは何かを考える公開型ミーティングです。目指すのは大学に属する“専門家”とそこに集う“非専門家”が所属や立場を越えて対話ができるスペース。参加者は自由に意見を交わし、好きなときに入退場できます。ここでも懐徳堂のスピリッツが活かされているようです。
カフェは19:00スタート。この日は「労働と芸術のための時間」をテーマに櫻田和也さんをゲストに迎え、マルクスの「資本にかんする章」の読み解きが始まりました。開始時の参加者は約20名でしたが時間が進むにつれて増え、最終的には30名近くになっていました。正直なところ私には少々難しいテーマでしたが、スタッフの話によると、今回のような哲学・経済の視点のものから裁縫など実践型のものまで硬柔織り交ぜた幅広いテーマが企画されているそうです。
オルタナティブカフェのテーマに共通するのは、知識や教養というよりも、こんな考え方もあるよ、と新しい道筋を示した提案や問いかけ。それこそが“オルタナティブ(既存の物に替わる新しい物)”の由来なんですよね。
カフェが終了したのは21:00。地上に出ると、辺りはすっかり暗くなっていました。こんな場所で行われるラボカフェって、つくづく面白いなぁと思います。
【 中之島図書館で、能を舞う?!「能楽講座」 】
翌日の夕方は、大阪府立中之島図書館で「能楽講座」に参加しました。大阪郷土資料を保管する中之島図書館。その中には貴重な能楽資料もあり、図書館のスタッフは、それを多くの人に伝え、図書館の新たな楽しみ方を紹介したいという思いがありました。そんなとき、能の普及を目指していたシテ方宝生流能楽師の石黒実都さんと出会い、今回の企画へとつながったそうです。
いつもの「能楽講座」は机と椅子を並べて作品を読み解いたりするそうですが、今回は夏休み期間ということで体験型ワークショップでの実施となりました。参加者は小学生2名を含む13名。会場となる、ふれあいルームを舞台に見立て、L字型に席が設置されています。自分には縁遠いと思っていた能の世界が一気に身近になりました。
まずは石黒さんによる、シテ、ワキ、アイといった基本的な用語の解説。その後、いよいよ本物の能面をつけた実演となります。演目「黒塚」の「身を苦しむる悲しさよ」というフレーズを「みをくるしむウー、かなしさよーオーオー」と抑揚をつけてお手本を示す石黒さん。悲しみをたたえた女の視線は空を切り、地団太を踏んで睨みつける。手のひらは眉毛のあたりに置いて、涙をすくうように。その表現ひとつひとつに意味があります。
「能は舞う方も見る方も非日常。それを大いに楽しんでいただきたいです」という石黒さんの言葉が印象的でした。
多彩なテーマが用意された講座やプログラム。今回訪れたスポットのほかにも学びの空間として、阪大中之島センターや関西大学 中之島センター、大阪芸大ほたるまちキャンパスなど、中之島には各大学のサテライト教室が点在しています。夕方に開講するプログラムの充実ぶりや、バラエティ豊かな講座内容は、人や企業が集まる中之島ならでは。ぜひみなさんものぞいてみてくださいね!
(2010年10月に掲載した記事です。※開講プログラムの最新スケジュールは、各スポットのURLページにてご確認ください。 )
所在地
大阪市中央区今橋4-1-1 淀屋橋odona2階
所在地
京阪電車中之島線「なにわ橋駅」地下1階コンコース
中之島の水辺に遊ぶ鳥の群れが北に旅立つと、それは春の合図。中之島の春といえば、なんといっても大川沿いの桜です。今年はいつもと違う楽しみ方がしたいなあ。なんて思いながら天満橋を歩いていると「御舟かもめ 桜クルーズ」と書かれたチラシを見つけました。今年のお花見は、この小さな舟に乗って、のんびり楽しんでみたいと思います。
大阪の川遊びを提案する「御舟かもめ」は、「水辺のまち再生プロジェクト」のひとつである水上タクシー(現在運休中)のコンセプトを引き継ぐ形で、2009年夏に始まりました。運営しているのは同プロジェクトのメンバーでもある中野さん夫妻。大阪は川でも遊べることをたくさんの人に知ってほしい。そんな二人の熱い思いがこの小さな船には込められています。
大川の桜の開花期間中に運航する「かもめ桜クルーズ」は3日前までの予約がベターですが、当日空席があれば、水上バスのチケットカウンター(京阪天満橋駅の西改札そば)で購入することができます。私が乗ったのは3月の終わり。八軒家浜の船着場に到着すると、目の前に広がる南天満公園の桜は2~3分咲きといったところでしたが、それでも川沿いが春色でにぎわっているのは嬉しいものです。 。
そこに緑色の小さな舟がやってきました。これが「かもめ」ですね!
「かもめ」は定員10名の小さな客船。船長はご主人の中野弘巳さんです。平たく幅広いデザインが特徴的な舟は、もともと熊本で真珠の養殖用に使われていた漁船を改造したもの。水面からの高さは1.5mと低めに造られています。この日は少し寒かったのでコタツが用意されていましたが、暖かい時期はウッドデッキに足を伸ばしてリラックスすることもできます。飲食の持ち込みもOKなので、天満橋駅周辺などでお弁当やおやつを買って乗り込めば、プチ宴会もできそう!?!
受付を済ませ、コースター型のかわいい乗船券を受け取って乗船。いよいよクルーズが始まります。
八軒家浜の船着場を出発すると、OMMビルを通り過ぎ、大川を北上。川崎橋を越えるとぐっと視界が広がります。爽やかな開放感を楽しんでいると川からせり出すように植えられた桜のパレード! 両岸は全長4.2kmの河川敷に作られた毛馬桜之宮公園です。中野さんの解説によるとその数、約4,800本。桜に手が届きそうな臨場感が味わえるのはオープンエアの舟ならではです。
左手には「桜の通り抜け」で有名な大阪造幣局も見えてきました。こちらもまもなく見頃を迎える桜が咲き並んでいます。桜宮橋をくぐり、帝国ホテル大阪の辺りでUターン。大阪最古の洋風建築、泉布観も近くで眺めることができました。
見慣れたはずのオフィスビルも、川から眺めればこんな形をしていたのかと新鮮な気持ちに。天神橋、難波橋、鉾流橋をくぐり、水晶橋を間近に眺めたあとUターン。この辺りは、東洋陶磁美術館にバラ園、大阪市中央公会堂と、本当に見どころ満載です。特に大阪市中央公会堂や水晶橋などのキリリとした佇まいは大大阪を感じさせてくれます。舟はゆっくりと八軒家浜に向かい、約50分のクルーズは終了です。
中野さんに「かもめ」という名前の由来をお尋ねしました。「冬にシベリアから飛来するかもめたちにとって日本は南国。都会でバカンスを気ままに味わっているんです。そんなかもめのように大阪でまったり過ごしてほしくて」。
桜の季節が終わったあとも、夕焼け鑑賞、お月見、夕涼みなど、使う人のアイデア次第でいろんな舟遊びにアレンジできそう。中之島クルージングで私たちがほしかったのは、こんな“気軽さ”だったのかもしれません。
大阪の喧騒を離れて、大阪の粋を楽しむ。華やかな昼間の桜も、しっとりとした夜の桜も、舟の上から眺めれば、きっと一味違う景色に映るはず。観光客が楽しめるのはもちろん、地元の方も大阪の魅力を再発見できるのではないでしょうか。2010年の予想満開日は4月3日頃とのこと。みなさんも今年は水鳥気分で川から桜を楽しんでみませんか?
(2010年4月に掲載した記事です)
乗船・下船場所
八軒家浜船着場(京阪地下鉄・天満橋駅北側)
年々高まっている「健康ブーム」。なかでも有酸素運動の人気は高く、中之島界隈でもジョギングやウォーキングをしている人をよく見かけるようになりました。 川沿いの遊歩道もどんどん整備されていき、スポーツや散歩など日常生活を楽しめるようなゆとりある空間が増えてきたのもその理由ではないでしょうか。そこで私も中之島でウォーキングにチャレンジしてみました。
土佐堀橋北詰め~湊橋北詰め。そして上船津橋方面へ
寒さを覚悟して着こんできたにも関わらず、この日はお天気もよく、とても暖かい1日で、絶好のウォーキング日和。 まず、土佐堀2丁目のバス停で下車し、土佐堀橋北詰めから湊橋北詰めへ向かって川沿いを歩いてみることにしました。 街中の割りに静かで、オフィスビルだけでなく住居用の建物も多く見られます。 近くには靭(うつぼ)公園などもあり、生活空間としても魅力のあるエリアです。早足で歩いて約5分程度で湊橋へ到着しました。
新なにわ筋を上船津橋方面へ。途中にある中之島西公園のテニスコートは、大阪府のレンタルテニスコートだそう。こんな街中に府民が気軽に利用できるスポーツ施設があるなんて嬉しいですね。
上船津橋の南詰め~堂島大橋方面
上船津橋の南詰めに到着し、堂島大橋方面へ向かって歩きます。 ここの遊歩道は上下二重構造になっており、川沿いの歩行者専用の遊歩道はウッドデッキスタイルでナチュラルな雰囲気。 とことこと歩いていくとやがて堂島大橋が見えてきます。 趣のある石造りの橋には鉄骨のアーチがかかっており、橋のたもとには、スケッチをしている人達も。 私はもっぱらデジタルカメラを利用していますが、風景を描き残すのも素敵ですね。堂島大橋から玉江橋にかけてはあいにく工事中でしたが、7月にはこちらも完成予定だそうです。
玉江橋~田蓑橋
10月に開通した京阪中之島線の終着駅「中之島」駅のある玉江橋南詰めから田蓑橋南詰めにかけての、新しく、まっすぐのびた遊歩道を歩くのはすごくキモチいい♪植え込みには花が植えられており、歩行者の目を楽しませてくれます。対岸には同じく昨年まちびらきをした「ほたるまち」が見えますが、遊歩道の段差や、ベンチに腰をかけて寛いでいる人が多く見られます。
「新しい街」を人々が受けいれ、そこに溶け込んでいる光景に、心がなごみます。
田蓑橋~渡辺橋
田蓑橋から渡辺橋に向かう遊歩道の右手に見えるのはダイビルです。 1925年(大正14年)に建てられた、大変美しいビルですが、残念ながら取り壊しがきまっています。やがて見えてくる朝日新聞ビル、フェスティバルホールなどもそれぞれ新しく生まれ変わる予定です。完成が楽しみな反面、古くから人々に愛されてきた建物が見れなくなってしまうのはちょっぴり寂しい気もします・・・
渡辺橋駅には駅中ショップ「MINAMO」があり疲れたらここで休憩をとることもできます。渡辺橋からガーデンブリッジにかけての遊歩道も工事中ですが、3月末には完成するようです。
大江橋~水晶橋~鉾流橋、そして「みおつくしプロムナード」へ
大江橋から水晶橋、鉾流橋まで一気に歩きます。日本銀行、中之島図書館、公会堂など趣きのある建物と、古い橋や石畳の並木道がしっくり馴染んでいます。
時刻はちょうどお昼どき。今日は暖かくて天気がいいからか工事現場で働く作業員の人たちが、階段に座ってお弁当を広げる姿も見られました。
中之島公園が現在整備工事中だったので公会堂でターンして西に向かいます。「光のルネサンス」でメインスポットとして賑わった「みおつくしプロムナード」も、川沿いのベンチで日向ぼっこしている人達がいたりと今日はのんびりムード。
淀屋橋の北詰め~中之島緑道、錦橋、肥後橋を超え遊歩道終点!
やがて淀屋橋の北詰めに到着、御堂筋を超えて「中之島緑道」へ。実は、これまで、この遊歩道に「中之島緑道」という名前があることなんて知りませんでした。なるほど、未だ花こそ咲いていませんが、植え込みにはこれから人々の目を楽しませるであろう花々の準備がしてあります。春が来て花が咲くのを心待ちにしているサラリーマンの方も多いのではないでしょうか。
錦橋、肥後橋を超えると一旦遊歩道がとぎれます。 ちょうどお腹も空いたので、これにて本日のウォーキング終了!
まとめ
道々写真をとったりしていたので、いささかのんびりとしたウォーキングとなりましたが、陽射しの下、川沿いの遊歩道を歩くのはとてもキモチがよかったです。また出張や旅行で中之島に宿泊なさる方も、観光ついでのエクササイズとしてウォーキングやジョギングをしてみてはいかがでしょう?宿泊客にウェア&シューズを貸し出しを行うサービスやジョギングマップも配布しているホテルもありますよ♪
2008年10月19日、京阪中之島線が開通しました! 開通にあたり、天満橋駅から中之島の西に向かって、なにわ橋駅・渡辺橋駅・大江駅・中之島駅(大阪国際会議場)が新設。実はこの4駅、【中之島の粋(エスプリ)】をメインコンセプトにしつつ、それぞれのエリアに根ざした特徴があるのだそうです。今日の散策は、この中之島線をリポートしたいと思います。
【 なにわ橋駅 】~文化と芸術が交差するエリアに溶け込む美しい駅
まずは、なにわ橋駅から散策スタート。駅周辺には、大阪市中央公会堂や大阪府立中之島図書館、大阪府立東洋陶磁美術館が点在する文化・芸術エリアです。少し足を伸ばせば、大阪天満宮や天満天神繁盛亭に行くこともでき、レトロ建築とグルメの名店が連なる北浜もすぐ近くにあります。
新設された4駅中、この駅の外観のみ建築家・安藤忠雄氏による設計となります。天井部分には、川面を流れる水を象徴する青色LED(発光ダイオード)を内蔵したガラスブロックを使用。別の日の夜に利用したとき、鮮やかな青のグラデーションで自らの姿を美しく照らしていたのを発見!とても綺麗でした。
私のお気に入りは、地下1・2階部分が吹き抜け空間になった改札付近。これは新駅中なにわ橋駅だけでした。それもそのはず、この駅は4駅の中で最も深い場所に作られているそうです。ホーム壁面は中央公会堂のレンガをイメージした「テラコッタ」が使用されています。この素材は、駅ごとにすべて異なっているとか。他の駅でもチェックしなくちゃ!
地下1階コンコースには「アートエリアB1(ビーワン)」がオープン。ここは従来の商業利用ではなく、文化・芸術ゾーンに関連した空間として利用されていくそうです。まずは2009年3月までの間、オープニング企画「中之島コミュニケーションカフェ2008」と題し、アート・サイエンス・哲学の専門家を交えたカフェトークをはじめ、さまざまな無料プログラムを開催。こんな素敵なエキナカなら大歓迎ですよね!
駅の真上は、都会のオアシス・中之島公園(2008年11月現在工事中)。中之島公園はもともと川沿いに広がる公園でしたが、中之島線の工事の関係で長らくその一部が閉鎖されている状態でした。今後少しずつ緑豊かな公園の姿を取り戻していくそうなので楽しみです。
さて、ここからは終点・中之島駅までの各駅を、電車に乗って移動します! 新型車両と会えるかな?
【 大江橋駅 】~堂島は今も昔もオフィス街!? 大阪の大動脈・御堂筋につながる駅
大江橋駅に到着。残念ながら新型車両には出会えませんでした・・・が、気を取り直してホーム壁面をチェック! この駅に使用されているのは、中之島の現代を象徴する素材「石」。駅そばに建つ日本銀行大阪支店や大阪市役所を連想させます。地上は御堂筋に面し、淀屋橋odonaや北新地へもこの駅が最寄り駅。東側の出口から淀屋橋を渡れば、地下鉄御堂筋線淀屋橋駅への乗り換えもすぐです。出口の外観はガラスと木を格子に見立てた現代的なデザイン。夜間はガラス越しに柔らかな光が広がり、美しい景観を見ることができそうです。駅の中にはファーストフード、コンビニ、書店と、コンパクトな造りながらビジネスマンのツボを抑えた3店舗がオープン。このエキナカ施設は、隣の渡辺橋駅で展開するグルメゾーンとともに「MINAMO(ミナモ)」という名前がつけられています。
また、江戸時代の堂島エリアは諸藩大名の蔵屋敷として発達し、商業の中心として栄えていた場所。通路の一角には江戸時代の堂島の蔵屋敷の名を連ねた地図が架けられていました。
そのほか印象的だったのがバリアフリー仕様の手すり。段差に合わせて階段状にデザインされているのですが、この形状の方が握ったときに力が入りやすくなるそうです。見た目もオシャレですよね。
【 渡辺橋駅 】~梅田の南の玄関口にふさわしい、大充実のエキナカ施設「MINAMO(ミナモ)」
渡辺橋駅への移動でも残念ながら新型車両に会えずでした。渡辺橋駅のホームの壁面は、未来を感じさせる「金属材」を使用しています。これを見て、私がハタと思い出したのは、前回の建築散歩で訪れた朝日新聞社の外観、そして国立国際美術館の地上にあるウサギのような形のオブジェ。どちらもこの駅が最寄りなんですよね。なかなか考えてるなぁ。そのほか、国立国際美術館の隣に建つ大阪市立科学館や堂島アバンザ、ドーチカこと堂島地下センターもここが最寄り駅。地下鉄肥後橋駅とも接続しています。梅田に向かう南の玄関と考えると、ひときわ利用客が多そうな駅です。
渡辺橋駅の注目ポイントは、なんといってもエキナカ施設「MINAMO(ミナモ)」。この名前は、堂島川に広がる“水面”、そして賑わいとネットワークのキーワード“みんなも”のダブルミーニングとなっているそうです。
渡辺橋駅の「MINAMO」は8店舗で構成されています。関西初上陸となるイタリアンバール「イルバール・ディプント」、スタンディング・ワイン・バー「百-hyaku-」、たこ焼きとおでんが名物の「焼酎バー くくるハナタコ」といったユニークなスタイルの飲食店や、マクドナルド、ドトールといったファーストフード店など、幅広いジャンルの飲食店が集まっており、モーニング、ランチ、仕事帰りにちょっと一杯、さらにはテイクアウトと、さまざまなシチュエーションに対応してくれそうです。
【 中之島駅 】~乗り心地◎の新型車両と確実に出会える裏ワザ?!
いよいよ終点・中之島駅に到着。中之島線は、中之島駅~京都・洛北の玄関口、出町柳間を65分で結びます。改札を出るとすぐリーガロイヤルホテルへつながる地下通路に直結。先日散策した「ほたるまち」や、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)も、この駅が最寄りとなります。ホームの壁面は中之島線の象徴である「木」を使用。この木は全駅のコンコース壁面に使用され、目にするたびに北欧インテリアのようでオシャレだなぁ~と思っていました。カナダ杉という木で、非常に燃えにくい材質なのだそうです。
そして、ここでようやく新型車両3000系に会うことができました! 車体は「風流の今様」をコンセプトに、水都・中之島の「水」と古都・京都の伝統や格式のイメージを兼ね備えた色として紺色を採用。車内も座席から吊革まで紺色を基調とした色合いで、とってもクールです。スエード調人工皮革“TOREX エクセーヌ”を採用した座席は、柔らかな肌触りで座り心地バツグンでした。
新型車両は、主に「快速急行」として運転されるそうです。この快速急行は、中之島線開業に合わせて仲間入りしたもの。毎時00分・30分に中之島駅発の電車はこの新型車両が走るそうなので、効率よく出会いたい方は、ぜひこの時間を目安に訪れてみてください。
中之島線開通にあわせ、地上には遊歩道が完成しました。中之島駅から大江橋駅まで電車と同ルートをたどる遊歩道から眺める街並みはとっても新鮮! ビルの間を縦横無尽に交差する高速道路も都会ならではの風景です。また、中之島は知る人ぞ知る夕日スポット。これからは遊歩道からものんびり眺めることができそうです。新型車両と駅の建築美が堪能できた今回の散策。ニューオープンのお店や中之島公園のリニューアルなど、駅周辺は今後さらに整えられていくことでしょう。中之島は地上も地下も、目が離せませんね!
(※この記事は2008年11月に作成されたものです)
再開発が進む中之島エリア。新しいビルが次々に建つ一方で、西洋建築に影響を受けた明治期の建物や、大正末期から昭和にかけての大大阪時代の息吹を今に伝える建物が残っています。今回の散策は、そんなレトロ建築を訪ねてみることにしました。
※文章中にある(年号)は、各建物が建てられた年を(和暦/西暦)で表しています
今日の散策は北浜駅からスタート。北船場を南北に貫く堺筋はかつて、洋風建築の百貨店や銀行などが立ち並ぶ大阪一の目抜き通りとして栄えた通りでした。その堺筋と土佐堀通りが交差する難波橋南詰そばに佇んでいるのが北浜レトロ (明治45/1912年)。このレンガ造りの洋館は、純英国式ティールーム「北浜レトロ」として、今や全国からファンが集まる人気店となっています。
ここから堺筋を南下すると出会えるのが、新井ビル(大正11/1922年)や青山ビル(大正10年/1921年)などの大大阪時代のレトロビル。新井ビルには洋菓子店「五感」、青山ビルは喫茶店「丸福珈琲店」と、いずれも建築当時の雰囲気そのままに美しくリノベーションされ、界隈に新たな息吹をもたらしています。
今回の散策では土佐堀通りを西に進み、栴檀木橋を渡って中之島に入ることにしました。橋の向こうには大阪市中央公会堂が見えました。この方向から橋を眺めるたびにうっとりしてしまう私。なぜなら、歩道のタイルや街灯が公会堂と見事にマッチしてロマンティックな雰囲気たっぷりだからです。公会堂は正面も二枚目ですが、横顔もかなり美形ですよ。
そして、その公会堂の隣に建っているのが中之島図書館(明治37/1904年)。昨秋、 ブックスポットを訪ねる散策で見学させてもらいました。中之島図書館の正面は、威風堂々たる雰囲気。クリスマスの風物詩「光のルネサンス」では、壁面がまるごと光のスクリーンとなる「ウォールタペストリー」として華麗に魅せてくれる建物でもあります。
図書館や大阪市役所を右に眺めながら、みおつくしプロムナードを通って御堂筋に出ると見えてくるのが、日銀こと日本銀行大阪支店(明治36/1903年)です。設計したのは、赤レンガが特徴的な東京駅の設計者として知られる辰野金吾氏。明治36年に建てられたということですから、翌37年に建てられた中之島図書館とほぼ同級生ですね。御堂筋に面した旧館は現在、展示室などになっており、その奥に実務を行う新館があります。(建物内部の写真は、日本銀行大阪支店から了解を受け、同店HPより転載しています)
日銀は、ベルギーの国立銀行をモデルに建てられた本格的なヨーロッパ建築。ドーム屋根と石造りの壁がかもし出す荘厳な美しさは、息をのむほどです。玄関ポーチをよく見てみると、角柱と円柱が混在していました。柱の上部は重厚な装飾が施されたイオニア式柱頭飾り。これらは、17~18世紀にかけてヨーロッパで広まったバロック様式と呼ぶそうです。そういえば、中之島図書館の旧本館は、ギリシア神殿のような力強い円柱を使用したネオバロック様式。このような洋風建築が相次いで建てられたことからも、中之島や船場エリアが近代大阪の中心として繁栄していたことが伝わってきます。
嬉しいことに、日銀は事前申し込みすれば、無料で見学することができます(見学についての詳細は記事の最後をご参照ください)。もちろん私も見学させてもらいました。ここでは大阪支店の業務内容や資料室を見学できるのですが、ミーハーな私にとって印象的だったのはやっぱり記念室。昔の貴賓室だったところを、旧館建設当時の材料を再使用しながら復元しているそうです。外観で見たドーム屋根の真下に当たるので、天井も高め。ステンドグラスも美しく、華やかなネオ・ルネサンス様式の特徴を残しています。
それからもう一箇所、見逃せないのが階段室。こちらも、歴史的史料保存のため、昔の階段と正面玄関を旧館建設当時の部材を再使用しながら復元したとか。この階段、なんと柱を1本も使わずに作られているそうです!
資料室には、40億円(もちろん模擬券)を梱包した十束封もありました。あら・・・40億円って思ったよりボリュームないかも? でも重さは相当。人力では運べないので、運搬時は“びしゃもん”という名前の専用機を使うそうです。ほかにも、大量の古くなった紙幣を細かく裁断されたものが見られて、なかなか貴重な体験となりました。
さて、ここでいったん中之島を離れ、淀屋橋をわたって淀屋橋odonaを右手に見ながら少し西へ向かいます。目指すは大阪倶楽部(大正13/1924年)。 大阪財界人が集う、最も古い英国風社交場です。大人の社交場というイメージそのままに、黒塗りのタクシーが次々乗り付け、パナマ帽をかぶったハイカラな紳士が出入りしています。建物はスパニッシュ様式にオリエンタルな雰囲気が加わった独特のデザイン。どこを見ても興味深かったのですが、特に窓の格子と壁のデザインが気に入りました。それにしても、淀屋橋周辺で一番新しい商業ビルのすぐ近くに、こんな粋な場所があったとは・・・。
今度は四ツ橋筋に出て北上します。土佐堀川沿いに建つ山内ビル(昭和5年/1930年)は、コンパクトながら存在感のあるスパニッシュ風建築。現在はオシャレな飲食店が入居しています。
肥後橋をわたって再び中之島へ。ここで忘れてはいけないのが大阪朝日ビル(昭和6/1931年)。昭和モダニズムを代表する建物です。柔らかなアール(曲線)が美しいこのビルの外装は、当時最先端の素材、ステンレス。晴れた日に反射して輝くさまは、新聞事業という当時最先端のメディアの勢いを象徴していたのかもしれません。
堂島ホテルを西に曲がり、いよいよ最後の目的地、中央電気倶楽部(昭和5/1930年)に到着しました。ここも大阪倶楽部と同様、会員制の社交場で、2008年11月に創立95周年を迎えるそうです。建物をふと見上げると、バルコニー部分に飾り壷を発見! 外観のスクラッチタイルの壁面やレリーフも上品です。一歩中に入ると、先ほどの喧騒が嘘のようなシックで落ち着いた空間で、大大阪の時代にタイムスリップしてしまったかのよう。ひと筆書きのように“らせん”を描いた階段もユニークでした。
季節の風景に溶け込みつつ、どこかノスタルジックな雰囲気で訪れる人を和ませてくれるレトロ建築。今日見てきたのは、ほんの一部。中之島近辺には素敵な建物がまだまだたくさんあります。建物はもちろん、ふだん何気なく渡っている橋も、実は近代建築のひとつです。この秋は、みなさんもレトロ建築散歩にお出かけしませんか?
(※2008年9月に取材・掲載した記事です。)
見学会のご案内
日本銀行の役割や業務について知っていただくため、大阪支店見学案内を行っています(営業場や明治時代の貴重な資料等をご案内し、業務内容を説明します)。ご希望の方は、見学希望日の3ヶ月前の月の第1営業日から2週間前までにご連絡下さい(事前予約制)。なお、同店業務上の都合や希望人数等により、ご希望の日時に添えない場合がありますので、ご了承下さい。
申し込み先 :日本銀行大阪支店営業課 (06-6206-7748)
今年10月の京阪中之島線開通を目前に、建設ラッシュの中之島界隈。前回訪ねた「淀屋橋odona(オドナ)」もそのひとつですが、福島区に新しく誕生した「ほたるまち」も、大きな話題を集めています。今回は、「水都・大阪」再生をテーマに再開発されたこのスポットを訪れてみました。
「ほたるまち」という印象的な名前は、コピーライターの道面 宣久さんが、与謝蕪村の俳句「淀船の 棹の雫も ほたるかな」をもとに、きらびやかな光ではなく、蛍のようなやさしい光で川を照らす街になってほしい、という思いから名づけられたそうです。
このエリアへの最寄り駅は、JR東西線 新福島駅、阪神本線 福島駅(いずれも徒歩約3分)。中之島線開通後は中之島駅が最寄りとなります。おなじく中之島線の渡辺橋駅や、地下鉄四つ橋線 西梅田駅、肥後橋駅、JR大阪駅からもアクセス可能。梅田・福島・中之島をつなげる「ほたるまち」をきっかけに、新しい人の流れが生まれるかもしれませんね。
肥後橋駅から堂島川沿いに西へ進むと、パノラマ状に広がる「ほたるまち」が見えてきました。堂島川と向かい合うように、左から、朝日放送新社屋、カフェ、ホール、マンション。それぞれの建物を個別に観ても、ひとつの集合体として眺めても、中之島の新しい顔にふさわしい、美しく洗練されたデザインです。
大阪市内の川沿いに建つビルは、大体、川に背を向けてしまっていましたが、「ほたるまち」は堂島川に向かって造られているところがとても新鮮で、水辺の景観がとても魅力的な空間に変わった感じがしました。水上バスからも素晴らしい景観が楽しめそうです。
「堂島リバーフォーラム」を右手に見ながらまちの中に入って行くと、緑や水辺やベンチが配され、落ち着いた雰囲気の空間となっていました。その周りに、オシャレなレストランやホール・住宅などが取り囲むように配されています。
「ほたるまち」は、「文化・情報を発信する」「都心に快適に居住する」「水辺に人のにぎわいを呼ぶ」の3つの機能を持っています。
情報発信を担っている施設といえば、朝日放送の新社屋や多目的ホール「堂島リバーフォーラム」があり、そのほか、慶応義塾と大阪芸術大学のサテライトキャンパスもオープンしています。
住居エリアとしては、地上50階建て約170メートルの超高層マンション「The Tower Osaka」や、堂島川が一望できる賃貸マンション「リバーレジデンス堂島」があります。
「堂島クロスウォーク」は、商業棟の全フロアと、「The Tower Osaka」の地下1階・1階部分で構成され、スーパーマーケット、フィットネスクラブ、カフェ、レストラン、クリニックモール、ドラッグストアなど23の店舗・施設がオープンし、マンションで暮らす人や周辺で働く人にとっては欠かせないエリアとなっています。
また、車で都心にアクセスする場合、駐車場探しもひと苦労ですが、「堂島クロスウォーク」には24時間駐車場を完備。駐輪場も24時間営業で、駐輪場は最初の1時間が無料となります。
店舗スペースは、「蕎麦 土山人 大阪」「ねぎ焼 やまもと」といった大阪の名店や、ソイスイーツカフェ「Mamezo&Cafe(豆蔵カフェ)」、ワインレストラン「WINE WARE HOUSE OSAKA-DOJIMA」など、シックからカジュアルまで幅広いジャンルのお店が集まっています。
「堂島クロスウォーク」のお店を散策した後、「ほたるまち」の周りを歩いていると、朝日放送の社屋そばには「福沢諭吉誕生地」「中津藩蔵屋敷跡」と記された石碑と、「天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ・・・」の銘文が刻まれた石碑を見つけました。これは、江戸末期、福沢諭吉がこの地にあった豊前・中津藩蔵屋敷内に生まれたことに由来しているとか。また、田蓑橋北詰のたもとには「蛸の松」が堂々たる枝ぶりで鎮座。どちらの史跡も、この地に息づく歴史を静かに伝えています。
南側の道路を渡って堂島川の川岸に出ると、「ほたるまち」と堂島川の間には、遊歩道と街路樹が整備され、散策が楽しめるようになっていました。また、まちびらきに合わせて、「福島港(ほたるまち港)」が開港。水都の象徴として今後ますます存在感を増していくんだろうな。
中之島の西側はこれまで“遊べる”エリアが少なかったけれど、「ほたるまち」のおかげで、これからはかなり楽しめそう。国立国際美術館でアート鑑賞したあと、川沿いを散策しながら「ほたるまち」のカフェやレストランでリラックス、なんてちょっと素敵なデートコースかも! 今回私が訪れたのは昼間でしたが、夜は夜は「WINE WARE HOUSE OSAKA-DOJIMAなど、バー使いできるお店もあり、大人のナイトスポットとしても満喫できそうです。ぜひみなさんもこの新スポットに出かけてみてくださいね。
(※2008年8月に取材・掲載した記事です。)