その中之島図書館で、毎週土曜、ガイドツアーが行われているのはご存じでしょうか? 今回は中之島図書館ガイドツアーの内容や魅力をご紹介するとともに、ガイドを務められている曽束訓子(そつか のりこ)さんはじめ図書館のスタッフの方々に、普段はお聞きできない興味深いお話を伺ってきました。
(トップの写真および★マークは、ShoPro・長谷工・TRC共同事業体提供)
■知らなかった図書館の由緒、見どころ、魅力に触れる感動の40分
スタッフの方々にお話を伺う前に、まず「ガイドツアー」とはどのようなものか、実際に参加させていただきました。
まず参加者には一人一台、耳に装着する「ワイヤレスガイドシステム」が手渡されます。これにより、ガイドさんの声が明瞭に聞こえます。
ガイドツアーのスタートは、2階中央ホールから。
ここでは、まず中之島図書館設立に尽力した住友家の方々にまつわるエピソードなどの説明があります。設計・建築にあたっては、日本の近代建築の父とも呼ばれる辰野金吾が関与していたことなど、非常に興味深いお話が聞けました。
取材当日は横なぐりの豪雨。通常、降雨時は館内のみのガイドツアーとなる場合もありますが、曽束さんが「せっかくの取材ですので、やはりどうしても外観の説明を行いたい」とのことで、傘をさし、急遽向かいの大阪市役所のエントランスにある大きな庇(ひさし)の中でのガイドツアーとなりました。
ギリシア神殿を思わせる荘厳な正面風景、各所にちりばめられた装飾や細工など、説明して頂かなければわからないことがいっぱい。本当に勉強になりました!
館内に戻ると、ガイドツアーは1階の休憩室へ。普段、何気なく使っているスペースにも、さまざまな由緒があることがわかります。
再び開放的なドーム型の天井を持つ中央ホールへ戻り階段を上ります。
そこには菅原道真、孔子、ソクラテス、アリストテレス、シェイクスピア、カント、ゲーテ、ダーウィンの8人の賢人(八哲)の名前が刻まれた銘板が。まさに図書館の「知」の象徴ともいえるでしょう。
あらためてご説明いただくまで、そのような銘板があることさえ気づきませんでした。
最後にツアーは3階の「記念室」へ。ここは明治・大正期の調度品が残っており、図書館設立時の面影が最も色濃く残された場所。どこか船の「舵」を思わせる窓は、商都として世界に羽ばたく大阪の象徴であり、「知」の海に船出するための港としての図書館を表しているようでした。
約40分間にわたり、じっくり説明を聞かせていただきましたが、どの話も興味深いものばかり。あっと言う間に過ぎてしまった感じです。こんな素晴らしいガイドツアーが毎週、開催されているのですから、ぜひ一度、参加されてみてはいかがでしょうか。
それではツアーご紹介に次いで、曽束さんをはじめ図書館スタッフの方々のお話を聞いてみたいと思います。
■全国紙や旅行ガイドでの掲載で、参加者の半数以上が大阪府以外から
※大阪府立中之島図書館は現在、株式会社小学館集英社プロダクション、株式会社長谷工コミュニティ、株式会社図書館流通センターの共同事業体が指定管理者として運営にあたっています。斉藤尚さんが共同事業体の統括責任者となります(令和6年6月取材時)。
-ガイドツアー、ありがとうございました。参加させていただいて本当によかったです!
曽束「そういっていただいて、こちらもうれしいです。ただ、中之島図書館にはガイドができる者が3人いるのですが、4年目になったばかりの私が、こうやって話させていただくなんて…という感じなんですが(笑)」
-いえいえ、お話がすごく面白かったですよ。ところで、ツアーの定員は10名ということですが、いつも何人ぐらいの方が参加されるのでしょうか。
曽束「その時によって違うのですが10人の時もあれば、おひとりの時もあります。これだけは私たちもなかなか読めないですね」
-おひとりしか居ない時もあるんですか!?
曽束「ありますよ!参加者さまには『マンツーマンで、すみません』といいながら、ご案内させていただいております。先着順ですので開催時間の30分前から受け付けて、10人で締め切るという方式でやっています」
-10名に達した後、参加希望者が来られた場合、お断りされるのでしょうか。
曽束「用意しているワイヤレスガイドシステムの数にも、限りがありますので、ご了承いただけたらと思います」
-ガイドさんから見て、特におすすめの場所はありますか?
曽束「全ておすすめですが、やっぱり外観と中央ホールが素敵だと思います。フォトジェニックというか、今風にいえば『映える』という感じでしょうか」
岩田「私は、記念室天井の織物ですね。設立当時の、百年以上前のものを現状復旧したとご説明すると、みなさん『へ~っ!』と感嘆の声をあげてくださいます」
-本当に、声をあげたくなるようなところばかりでした。参加される方は、どのような方が多いのでしょうか。
曽束「体感的に一番多いと思うのは、40~60代の方でしょうか。ご夫婦の方も結構、多いように思います。
それと大阪に旅行で来られた方など、府外から来られる方が多いですね。関西圏でなく、もっと遠方からです。昨年のアンケート結果では、府外からが半分以上でした」
岩田「最近、旅行ガイドブックや全国紙の広報の方からのお問い合わせも多く、それをご覧になって、関西方面に旅行したついでに・・・という方が増えているのかもしれません」
■自分より建築に詳しい方がいると、申し訳なくなる
-ガイドをするにあたって、ご苦労されていることはありますか?
曽束「建築や歴史など、私よりも詳しい参加者が来られた時ですね。かなり専門的な質問をされることがありますが、私ではお答えしかねることも多いのです。そんな時は素直に『わかりません』とお伝えしているのですが・・・」
-なかなか大変ですね・・・
曽束「大変というより、『お答えできず、申し訳ありません』という気持ちでいっぱいです。
もちろん、そんな時はいろいろ調べて勉強するわけですが、120年という歴史があるので、とても調べきれなくて・・・」
-反対にガイドをやっていて、「よかったこと」とか「うれしかったこと」は何でしょうか?
曽束「やはり『楽しかった!』といっていただくのが、一番うれしいですね。『勉強になりました』といってくださる方もいらっしゃいますが、シンプルに『楽しかった』と思っていただけるだけで充分ですね。ツアーをきっかけに中之島図書館に興味を持っていただけたら、次は図書館の資料を使って、建物や歴史について調べていただけるとうれしいです」
岩田「スタッフの一人としてガイドツアーに参加してから、この建物を見る目が違ってきました。それ以来、『こんな素敵な体験ができるガイドツアーを、もっと多くの人に知らせたい!』と思い広報活動を行っています。だから今回の取材のように、ガイドツアーのことを知っていただける機会が増えることは、本当にうれしいですね」
-本当に、私も見る目が変わった感じがします!
岩田「そうですよね!それでもっと話題にしていただきたいと思い、今、館内にある『スモーブローキッチン中之島』という素敵なカフェとタイアップして、そこでモーニングを食べてからツアーに行くといったこともやっています。これが月に1回なんですが、大人気ですぐに予約が埋まるという状況です。予約受付している8月開催分まで、すでに満席となっていて(令和6年6月取材時)、とても予約の取りづらいツアーになっています」
※9月以降の予約については、中之島図書館ホームページの「イベント情報」をご確認ください。
https://www.nakanoshima-library.jp/event/
■中之島は「大阪の文化ステーション」。その一翼を担うのがツアーガイド
「これからの展開として、どのようなことをお考えでしょうか?」という質問に、中之島図書館の統括責任者である斉藤尚さんが答えてくださいました。
斉藤「中之島の他の施設と横の繋がりを深めようということで、彼女たちガイドツアーが中心になって、さまざまなコラボ企画を行っています。
昨年は、御堂筋を挟んで向かいにある日本銀行大阪支店さん、大阪市中央公会堂さん、そして私たち中之島図書館がコラボして一緒にガイドツアーを行いました。
各館のツアーガイド同士が繋がって、中之島の文化を深める大きな動きとなっています。その一翼を担っているのが、彼女たちガイドなんです。先ほど『ガイドをやっていてうれしかったことは?』というご質問がありましたが、そういうこともガイドの楽しさや、やりがいに繋がっているのではないかと思います」
岩田「先にご紹介したモーニング付きのツアーも、中央公会堂さんとのコラボイベントです。いろんなイベントで、ツアーの魅力を感じていただけたらと思います」
曽束「『こども本の森 中之島』さんと、私たち中之島図書館で子どもたちを対象にしたコラボツアーもやっています。子ども向けなので退屈されないよう、途中、クイズを入れるなどいろいろ試みています」
斉藤「中之島は、『大阪の文化ステーション』なんです。いろんな施設とコラボしたガイドツアーであるとか、あるいは図書館を使ったさまざまな講座や展示会も増えてきました。『大阪の文化ステーション』としての活動が、どんどん活発になっていると思いますね」
-これからますます楽しみが増えていく中之島ですが、地域としてどのような印象をお持ちでしょうか?
曽束「素敵な場所ですよね。その人それぞれ、いろんな思いがあるのではないかと思います」
岩田「誰にとっても、思い出の場所になっているのではないでしょうか。年配の方から若い方やお子さままでが繋がっていて、思い出を作れる場所なんだと思います」
斉藤「『文化ステーション』という言葉が出てきましたが、中之島は図書館に文学、美術館に美術、そしてフェスティバルホールに音楽と、文字通りの『文化』に満ちた地域です。
さらには多くの会社があり『企業文化』にも満ちています。ホテルもたくさんあって、さまざまな文化が集積している場所、それが中之島なんだと思います。
このように幅広い文化が狭い島に集積しているというのは、他にはないでしょう。そんな意味からも『文化ステーション』という位置づけは、非常に重要だと思います」
ガイドツアーを通して、文化ステーションとしての中之島を広めていく・・・そのような気概をスタッフのみなさんからひしひしと感じました。
先にも書きましたが、毎週土曜日に行われているツアーなので、比較的、気軽に参加できるのではないでしょうか。この記事で興味を持たれましたら、ぜひとも、ご参加いただけたらと思います。
●中之島図書館ガイドツアー
開催日時:〈毎週土曜〉 1回目/11:30~、2回目/13:30~、3回目/15:30~
所要時間:40分程度
受付方法:各回30分前より先着順にて受付(事前申込不要)
受付場所:中之島図書館 本館2階 総合案内
定員:各回先着10名さま
参加費:500円〈オリジナルグッズ付〉
注意事項:
- ・階段の昇り降りがございますのでご注意ください。
- ・歩きやすいお履物でお越しください。
- ・受付では荷物のお預かりはできません。館内のコインロッカーをご利用ください。
- ・閲覧室、書庫のご案内はありません。
- ・写真撮影が可能です。(一部不可のものもあります。)
- ・団体(10名以上)の場合は、別途ご相談ください。
※大阪府立中之島図書館ガイドツアーについては、下記サイトをご参照ください。
https://www.nakanoshima-library.jp/guide-tour/
大阪府立中之島図書館 | |
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住所 | 〒530-0005 大阪市北区中之島1-2-10 |
電話 | 06-6203-0474(代表) |
開館時間 | 月曜日~金曜日:午前9時~午後8時 土曜日:午前9時~午後5時 |
休館日 | 日曜日、国民の祝日・休日、 3月、6月、10月の第2木曜日、年末年始 |
アクセス |
〇地下鉄淀屋橋駅 徒歩5分 〇京阪本線淀屋橋駅 徒歩5分 〇京阪中之島線なにわ橋駅 徒歩3分 |
ホームページ | https://www.nakanoshima-library.jp/ https://www.library.pref.osaka.jp/nakanoshima |