天満橋にある「川の駅はちけんや」と、東横堀川にある「β本町橋」を拠点に活動している日本シティサップ協会。今、話題のサップをはじめ丸型の「水上こたつ」や「水上自転車」など、街中の川で遊べるアクティビティを、次々に提供しています。
この楽しい「水上遊び」の考案者であり先駆者でもある、同協会代表の奥谷崇さんに、水上遊びの魅力についてお聞きしてきました。
(トップの写真および★マークは、日本シティサップ協会提供)
学生の頃から水中撮影などに携わってきた奥谷崇代表。さまざまなマリン・スポーツに精通。その見識をシティサップをはじめとする楽しい水上アクティビティに活かしている。
水上を自由なスタイルで楽しみたい。そんな時に「サップ」との出会いが。
– まずは「サップ」とはどういうものか、教えてください。
「『サップ』はSUP、つまりStand Up Paddleの頭文字なんです。要するに立って漕ぐ(パドル)ボードのことですね。カヌーなど一般のパドル・スポーツは座ってやりますが、サップは立って漕ぎます」
– 奥谷さんがサップに興味をお持ちになった理由は何でしょうか。
「水中カメラ関係の仕事をしていまして、お客さまと一緒に、よく水中撮影して遊んでいたのです。岸辺ではなく、やはり水の上で撮影したいということになり、ボートやカヌーなどよりもっと自由なスタイルでできないか?と考えている時に、サップと出会ったわけです。
でも当時はサップなんて誰も知らなかったので、僕らは『水上さんぽ』って呼んでいました」
– そもそもは、水中撮影がメインだったのですね。
「そうです。最初はカメラを持ってやっていたのですが、『あそこまで競争しよう!』という感じで、だんだん漕ぐこと自体が面白くなってきました。それで、みんなで琵琶湖や海に行って漕いでいたんです」
このようにサップをマリン・レジャーのひとつとして海や琵琶湖で楽しんでいた奥谷さんでしたが、ある時、ふと思いたったそうです。
「よくよく考えてみると、ここは『水都』といわれる大阪。水、というか川は周囲にいっぱいあるし、わざわざ琵琶湖まで行かなくてもええやん…と、そう思ったわけですよ」
大川、天満橋付近を「さんぽ」するサップ。ご覧のようにボードの上に立って、パドルを使って進む。ただ「スタンド」とはいうものの、立っても座っても寝転んでも、自分の好きなスタイルで楽しめるのがサップの魅力だという。★
– なぜ、海や琵琶湖から大阪の川に移ったのでしょうか?
「学生の頃から潜って撮っているので、サンゴやきれいな海の風景を見ても、もうときめかないわけです。ところが、大阪の川でやってみると、めちゃくちゃ面白かった!いつも歩いている橋をくぐる、通りからは見えないビルの裏側を見る、護岸から流れ落ちる滝を見つけるといった、自然の世界にはない光景ばかりで、すごいトキメキがあったんです!それが自分が住んでいるところの、すぐ近くにあることが驚きであり発見でした」
– 大阪の川でも、水中撮影をされたのですか?
「道頓堀の、有名なネオンのところで撮りました。180度の超広角で撮れるカメラで道頓堀川の水中と水上のネオンを撮るのですが、『こんな写真、見たことない!』という感じで、もう夢中になるぐらい面白かったんです」
– その面白さを伝えたいという思いから、協会を設立されたのでしょうか。
「川で遊ぶために、大阪市などの行政にも認可を取っていたのですが、その縁で『水都大阪2009』の催しとして応募しないかと声がかかり、水上でのアクティビティをさせていただきました。その後も行政のいろんな方々とお話しする中で、一般社団法人にした方がわかりやすいかなと考えました」
京阪天満橋駅側にある、日本シティサップ協会の拠点のひとつ「川の駅はちけんや」 。この場所に移った時に、名称を「日本シティサップ協会」に変更したそうだ。入口に並べられたサップのボードに目が行く。★
2021年8月、マイドームおおさか裏手に「β本町」がオープンした。東横堀川には水門があるため、波の影響を受けにくい。大阪川遊びの新しい魅力となるだろう。★
どんな方にも楽しんでもらえるよう、水に落ちない、落とさない道具を考案。
– 今はサップの他、「水上こたつ」や「水上自転車」などもされていますが。
「僕らはサップが簡単だと思っていたのですが、それでも何人かは水に落ちるんです。一般の方にとってサップは、難しいんだと痛感しました。だから個人の技術に頼るのではなく、道具として『絶対、人が落ちないもの』が必要だと思ったわけです。それと海のレジャーは、水着でするから濡れてもいい。でも街中のレジャーは、普段の服装そのままでもできるようにしたかったんです」
– 安定性の高そうな「丸型ボート」や「水上自転車」は、どうされたのですか?
「『絶対、人が落ちないもの』なんて、世の中を探してもないんですよ。だから自分たちで作ることにしました。
安定性があって、護岸にぶつかって穴が開いても沈まない仕様にする、そう考えていったら、あの丸型のボートになったんです」
– 冬は丸型のボートにこたつを積んで、「水上ピクニック」をされています。発想がユニークだと感心しました。
「たまたま『丸型を活かして、何かできない?』といった時に、『こたつでも置いてみるか』という感じで、最初から狙ってやったわけではありません。いつもそんな感じで、自然の流れでやっています(笑)」
東横堀川で、「水上こたつピクニック」をお楽しみのみなさん。
(取材時は12月)寒さが厳しい時期にもかかわらず、水上で「たこ焼き」を楽しんだり、寝転がったりと、ゆったり時間を満喫している。
(テント屋根のあるボートは火気厳禁)
自転車の感覚で、ペダルを踏んでスクリューを回す「水上自転車」。安定性が極めて高く、転覆する恐れはほぼない。東横堀川は水門を閉じればプール状態。波もなく、普段着で乗っても、一切、問題ない。
誰もが楽しめるようにするには、「マニアにならない」という理念が必要。
– 水上のアクティビティに対する姿勢が、非常にユニークに感じられます。
「『マニアにならない』というのが、始めた時からの基本理念です。当初はスポーツ的になったこともありました。『負けないぞ』『早く漕ぐぞ』とだんだん競争になってきました。そうなると、ふと後ろを振り向くと誰もいなかった、という状況になったりします。それだけは避けたかったんです」
– 確かにマニアの輪の中には、なかなか入れませんね。でもここはすぐに参加できそうです。
「『水上さんぽしませんか?』と誘った時に、絶対に『イヤだ』と断れないようにしたいんです(笑)。
『水に落ちるかも…』といわれたら『いいえ、ウチは落ちません』。『水の上は寒いでしょう?』『こたつがあります』って(笑)。
そのうち根負けして『じゃあ、ちょっと』と。それで乗ったらわかるんです。大阪の街中に、こんな面白い見たこともない光景が広がっていることが。この面白さを、少しでも多くの人にわかってもらいたいんですよ!」
ご自身が体験した感動を、他の方々にも体験して欲しい…このような奥谷さんの強い想いが、ひしひしと伝わってきました。
こたつを積んだ「丸型ボート」。たこ焼き、焼き肉など火を使う場合は、テント屋根のないタイプを使用する。自力で走行させる他、電動モーターも着いているので安心だ。
船着き場に置いてある「どてら」。「寒そうで…」と二の足を踏むお客さまに、奥谷さんらしいステキな思いやりだ。
中之島はシティサップ発祥の地。そして街中で自然を感じられる場所。
– 中之島は、奥谷さんにとってどのような場所でしょうか。
「そもそも大阪で最初にサップをやったのは、裁判所の前の若松浜なんです。だから中之島は日本シティサップ協会の発祥の地ともいえます」
– 『はちけんや』と『本町橋』の2カ所が拠点ですが、それぞれの魅力は何でしょうか。
「中之島は、大阪市内でとても自然を感じられる場所です。木々が多いだけでなく、潮の満ち引きで変わる川の流れや風、飛び立っていく水鳥…。道を歩いているだけでは、感じることのできないことが感じられる場所ですね。
一方、本町橋のあたりは上に阪神高速の高架があるので、野球でいえばドーム球場のようなもの。川の流れもほとんどなく、ゆったりと遊んでいただける場所です。それぞれの魅力で、大阪での川遊びを満喫していただきたいですね」
記者も取材後、「水上自転車」に少し乗せていただきましたが、それだけで目の前に広がる見慣れない光景に、夢中になってしまいました。いつもの馴染みある場所が、全く違ったものに見えたのです。
みなさんにも、魅力あふれる「水上さんぽ」を、ぜひ体験してみていただきたいと思います。
「β本町橋」の川遊びスポットは、上に阪神高速の高架が屋根の役目を果たしている。雨の日でも遊びるのはもちろん、暑い日差しからも守ってくれるので、夏でも快適に楽しめるのだそうだ。
β本町橋の船着き場に立つ奥谷さん。
「水上のアクティビティは、メチャクチャ楽しいですよ。みなさん、ぜひお越しください!」
一般社団法人 日本シティサップ協会 |
住所 |
〒540-0031 大阪市中央区北浜東1-2(川の駅はちけんや) 〒540-0029 大阪市中央区本町橋4-8(β本町橋) |
電話 |
06-6125-0550 |
活動時間 |
川の駅はちけんや/7:00~10:00 β本町橋/11:00~17:00 |
定休日 |
火曜日 |
アクセス |
川の駅はちけんや
〇京阪本線・地下鉄天満橋駅 徒歩すぐ
β本町橋
〇地下鉄堺筋線・中央線堺筋本町駅 徒歩5分
〇地下鉄谷町線谷町四丁目駅 徒歩8分
〇京阪本線北浜駅 徒歩10分
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ホームページ |
https://www.citysup.jp/
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