中之島には「レトロと現代」、「高層ビルと緑」、「ビジネスと文化」など相反する要素がうまく調和した不思議な魅力があります。そんな中之島に新たな魅力が加わりました。「中之島フェスティバルタワー」。それはまさに「ビジネスと文化」が調和した新スポット。今回は、オープン間もない「中之島フェスティバルタワー」の見どころを建築裏話を交えてご紹介いたします。
中之島フェスティバルタワーは、「音楽の殿堂」と称された旧フェスティバルホールを建て替え、オフィスビル、商業施設と組み合わせた地下3階、地上39階、高さ200mの超高層ビルです。客席に柱を設けることができない大空間の音楽ホールの上に超高層のオフィスビルを載せるという驚きの構造にも関わらず、中之島フェスティバルタワーは阪神大震災の1.5倍の地震にも耐えられる耐震性能を実現した最先端建築物です。
【帰ってきた音楽の殿堂 フェスティバルホール】
旧フェスティバルホールは、閉館までの50年間に約4000万人が訪れたという国内有数の音楽ホール。その優れた音響特性は「天井から音が降ってくるようだ」とも言われました。新しいフェスティバルホールは、優れた音響特性を継承しつつ、演目に合わせて舞台の大きさを最適化する造り、快適さを向上させた観客席などもっと音楽・舞台を楽しめる空間に生まれ変わっています。 1階の観客席に座ってみた感想は「贅沢」でした。重厚感、高級感ある内装に、大きく座り心地の良い椅子、ゆとりある前後間隔、高い天井などゆったりと楽しめる空間に仕上がっています。また、壁面に用意されたバルコニーボックスの感想は「新鮮」です。オペラや演劇など動きのある舞台の場合、斜め上から舞台を見下ろすこの席は、正面からではわからない、奥行感ある役者の動きが楽しめます。お気に入りの作品なら、視点を変えて楽しみたくなるかもしれません。こけら落としは来春。生まれ変わった音楽の殿堂で、どんな響きが楽しめるのか、今から楽しみです。
飲食店を中心としたフェスティバルプラザは、中之島フェスティバルタワーの商業ゾーンです。気軽に立ち寄りたくなるお店から、フェスティバルホールでの催しとセットで利用したくなるリッチなお店や保育所などの厳選されたテナントが入居されています。ランチに、仕事帰りに、休日にとオールマイティに使えそうです。
【竹中工務店 岡橋さんに聞く建築裏話】
中之島フェスティバルタワーは、「とにかく入ってみたいと思わせる魅力的なスペースを目指した」という高いこだわりが随所にちりばめられています。加えて、その構造や中之島特有の条件が重なって、実現には多くの困難が待ち受けていたそうです。今回は、工事計画及び品質管理、広報業務の責任者として建設に携わられた竹中工務店 岡橋 稔さんに建築裏話と見どころをうかがいました。
●中之島フェスティバルタワーの建設は、これまでのご経験と比べていかがでしたか?
●具体的には、どういった点でご苦労されたのですか?
オフィスビルとしての使い勝手を高めるため、外壁から内側約15mは柱がありません。そのため、長さ約20mもの梁が必要でした。また、ホールの上部も同様に長大な梁が横架しています。これらを運び入れるには、荷台だけで20m以上の長大な車とその車が曲がって入れる搬入口が必要です。搬入口の設置にあたっては、人通りが多い地域だけに安全に十分配慮した上で、所轄の天満警察署にうかがいお願いにお願いを重ねました。
苦労は上物だけではありません。特殊な構造をもつ超高層ビルを支える基礎にも大きな配慮が払われています。私の知る限り日本最大級の86mの深さの現場造成杭を打っています。また、すぐ横を走る地下鉄四つ橋線や中之島線に影響が出ては一大事。細心の注意を払って地下工事を進めました。
● 大きな建築物だけに、苦労話のスケールも大きなものばかりですね。では、次に中之島フェスティバルタワーの見どころを教えてください。
そうですね。景色はもちろんですが、このビルは「人間らしい超高層ビル」だと思っています。困難に打ち勝った職人さんたちの仕事の跡を是非見て、触れていただければと思います。
13階のスカイロビーに上がっていただくと間近で見て、触れていただけます。13階から上のオフィス26フロアを支える巨大な骨組みは、その大きさ、迫力だけでなく、溶接跡まで是非見てください。通常の溶接ですと柱の周りを20から30周溶接するのですが、メガトラスでは実に100周以上もの溶接を繰り返しました。今は消してしまいましたが、職人さんが回数を忘れないように、正の字を何度も書いて作業されていたんですよ。
低層階の外壁やフェスティバルホールに使われているレンガの数は約22万個。非常に大きなこのレンガは1個あたり約10kgもあります。これを約15名の職人さんが1個1個手作業で積み上げました。よく見ていただくと不規則に凸凹があります。この凸凹の実現も実は大変で、各人の裁量に任せていては、表情がバラバラになってしまいます。そこでモックアップ(1分の1模型)を使ってイメージを共有し作り上げました。
フェスティバルホールの通路にある梁や壁はコンクリート打ち放しなのですが、その表面には小叩きという細かな細工が施されています。この仕上げですが、コンクリート打ち放し面の表面にノミを打っていくものです。この作業は、斫り(はつり)工と呼ばれる職人さんが行っており、1日に1人で約2平米しか施せない細やかなものです。梁だけでも何本もあり、全て完了させるのに気の遠くなる時間がかかっています。
●ありがとうございます。いろんなところで職人さんの仕事に触れることができるんですね。もう一度行って触れてみます。
最後に中之島フェスティバルタワーの建設に携わられていかがでしたか?