東洋陶磁美術館横のバラの小路の入り口、雰囲気ある煉瓦の門に這うのは「ピエール・ドゥ・ロンサール(Pierre de Ronsard)」。「バラの詩人」と言われたフランス・ルネサンス期を代表する詩人ロンサールにちなんで名づけられたバラです。
道を挟んで右(南側)には、ドイツ語で「白雪姫」の意味を持つ「シュネーヴィッチェン」が植えられてます。別名は「アイスバーグ(氷山)」。名前によって花の印象が随分違います。 すぐお隣の「マダム カロリン テストゥ」は19世紀末に活躍したフランス人のファッションデザイナーの名前。彼女のプロモーションの一環として命名されたそうです。バラの名づけが広告塔として活用されていたんですね。
人名だけでなく、色や香りから食べ物(スイーツ)や飲み物(お酒も♪)を連想させる名前がつけられたバラも多くあります。
難波橋を渡ってすぐの南西側に植えられているのは「イングリット・バーグマン」。「カサブランカ」などの作品に出演した往年の大女優ですが、1982年67歳で死去した後、この名が冠せられました。決して名前負けすることなくゴージャスに咲き誇っています。
「イングリット・バーグマン」の隣人、「ジーナ ロロブリジーダ」もイタリア出身の女優さんだそうです。彼女は、2013年現在御年85歳になられてもご健在の様子。イタリア女性を彷彿させる陽気な雰囲気のバラです。
そしてその隣に咲く「シャンティ・ロゼ・ミサト」は、歌手の渡辺美里さんに捧げられたバラ。「バラ色の歌」という意味だそうです。 さらにそのお隣は16代アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンの名前を持つ「ミスター・リンカーン」。男性の名前をつけられたバラは珍しくはありませんが、芸術家の名がほとんど。政治家というのは少ないかも。
また、20世紀最高のディーヴァ(歌姫)と呼ばれたオペラ歌手、「マリア・カラス」の名を冠したバラもこのエリアに咲いています。華々しい栄光と、スキャンダルで世間を賑わせ、謎の死でもって享年56歳で散っていった様(さま)は、まさに花の命の短さにたとえられます。 「リリー・マーレーン(リリー・マルレーン)」は、第二次世界大戦中のドイツ兵の間で流行った歌のタイトルです。女優のマレーネ・デートリッヒが歌い、日本でも有名になりました。聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。
3.バラ園(東側)のバラ達
ばらぞの橋を渡ってすぐ目についたのが、アーチに這うつるバラ「ミセス・PSデュポン」。世界屈指の大企業、デュポン社が由来となっており金色に輝いています。
そばに咲く「マサコ」は皇太子の御成婚の翌年、雅子妃殿下にちなんでつけられたそうで別名「エグランタイン」といい、こちらは「セーブ・ザ・チルドレン」を設立した慈善家の名前だそう。
デザイナーとして有名なウィリアム・モーリスとチャールズ・レニー・マッキントッシュの名を冠したバラも、近くに仲良く並んで植えられています。
そばにある「ジェントルハーマイオニ」は、有名なファンタジー映画のヒロインの名かしら、と思ったのですが、元祖はウィリアム・シェークスピアの戯曲「冬物語」の登場人物の名だそうです。 「メアリー・マグダレン」は、聖書に出てくる「マグラダのマリア」を英語表記したもの。なるほど~。 画家である「アンリ・マティス」や「エドガー・ドガ」、作曲家の「チャイコフスキー」、「ヨハン・シュトラウス」の名も発見。「マッカートニー・ローズ」は、ビートルズのポール・マッカートニーから名づけられた香り高いバラです。
今回の散策では、「バラ」とひとくくりに呼ばれているものの、実にたくさんの種類があり(紹介したのはほんの一部です)、それぞれの花に個性があることに驚きました。みなさんも、ぜひ中之島に足を運んでご覧になってくださいね!
地下鉄・京阪本線堺筋線「北浜」駅下車徒歩5分