大好評の『ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展』を
国立国際美術館の主任研究員が解説します ※2017年10月15日をもって終了しました。
「バベルの塔」展ポスター
「バベルの塔」展とは
国立国際美術館で現在開催中の展覧会が、『ボイマンス美術館所蔵ブリューゲル「バベルの塔」展』16世紀ネーデルラントの至宝―ボスを超えて―です。
[開催期間:2017年10月15日(日)まで]
この展覧会は、オランダのロッテルダムにあるボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館の全面的な協力のもとに実現した展覧会で、同館が所蔵するピーテル・ブリューゲル1世の「バベルの塔」を中心に、15、16世紀のネーデルラント(現在のオランダ、ベルギー地方)美術の至宝、約90点を紹介する内容となっています。
この時代は、イタリアを中心にルネサンス美術が全盛期を迎えていましたが、一方、ネーデルラントも、貿易によって大いに繁栄しました。多くの富が蓄積され、文化の振興も目覚しく、世界に冠たる国家となったのです。
そうした中で、美術の分野でも優れた才能に恵まれた画家たちが、数多く輩出されるようになりました。
「キリストの頭部」
ディーリク・バウツ
1470年頃/Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
「ヨセフの衣服を見せるポテパルの妻」
ルカス・ファン・レイデン
1512年頃/Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」
ヨアヒム・パティニール
1520年/Loan Netherlands Cultural Heritage Agency, Rijswijk/Amersfoort, on loan to Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
当展覧会のもう一人の注目作家 ヒエロニムス・ボス
今回の注目作家の一人で、奇想、幻想の画家として美術史にその名を留めるヒエロニムス・ボスと、彼のあとを継ぎ、ネーデルラント美術に多彩な足跡を残したピーテル・ブリューゲル1世は、この時代のネーデルラントを代表する2大巨匠と言えるでしょう。
ヒエロニムス・ボスは、生前からすでに大きな名声を獲得し、顧客には時の王侯貴族や裕福な貿易商らが名前を連ねていました。彼は西洋美術史上、最も独創的な画家の一人に数えられていますが、今日では油彩画約25点と素描10点の存在が知られるに過ぎません。今回は、その希少な作品のうちの2点「放浪者(行商人)」と「聖クリストフォロス」が来日しています。この機会にぜひご覧ください。
「ヒエロニムス・ボスの肖像」(部分)
ヘンドリック・ホンディウス1世
1610年/Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
「放浪者(行商人)」
ヒエロニムス・ボス
1500年頃/Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
「聖クリストフォロス」
ヒエロニムス・ボス
1500年頃/Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands(Koenigs Collection)
世紀の大傑作 ピーテル・ブリューゲル1世の「バベルの塔」
そして、ブリューゲル1世の「バベルの塔」です。旧約聖書で、神はノアと契約を結びます。大洪水の後、生き延びたノアは、子孫が地上のいたるところに散らばって暮らすことを約束しますが、その後、子孫たちはひとところに集まって暮らし、やがて天まで届く高さの塔を建てようとします。それに怒った神は、ある時、それまで同じ言葉を話していた人々に、いくつもの異なる言葉を話させ大混乱を生じさせることで、人々は地上の各地へ散っていき、ついに塔が完成することはありませんでした。この絵は、ブリューゲル1世の観察力の鋭さと高い描写力が遺憾なく発揮された傑作です。
また、展覧会の開催にあたり、東京藝術大学COI拠点の協力で、同拠点が持つ高精度な質感を伴う文化財複製制作技術と、最先端の映像制作技術を用いて、「バベルの塔」を300%に拡大した複製画と、3DCGによる、マクロとミクロの視点を組み合わせた多角的な映像による再現を行いました。肉眼では分からない絵の細部や、建築的な構造にまで踏み込んで、より深く作品を理解できるようになっています。
「ピーテル・ブリューゲル1世の肖像(部分)」
ヨハネス・ウィーリクス
1600年出版/Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
「バベルの塔」
ピーテル・ブリューゲル1世
1568年頃/Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
また、「AKIRA」などで世界的に知られる漫画家・映画監督の大友克洋さんが、本展の目玉作品であるピーテル・ブリューゲル1世作「バベルの塔」からインスピレーションを得た新作「INSIDE BABEL」を制作し、特別展示されています。
世界的にも極めて数の少ないボス、そして24年ぶりの来日が実現したブリューゲル1世「バベルの塔」を、日本で見られる又とない機会です。
10月15日まで開催されていますので、ぜひ間近で迫力と素晴らしい描写を実感されてみてはいかがでしょうか。
国立国際美術館 主任研究員 安來正博
『ボイマンス美術館所蔵ブリューゲル「バベルの塔」展』 16世紀ネーデルラントの至宝―ボスを超えて―
★開催期間:2017年10月15日(日)まで
★開館時間:10時00分~17時00分 (入場は16時30分まで) 会期中の金&土曜日は21時00分(最終入場20時30分まで)
※休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日に休館)
※都合により変更になる場合があります
(2017年9月/※画像はイメージです)
大阪府大阪市北区中之島4-2-55 国立国際美術館