大阪地方裁判所の裏手にオープンしてから、今年で49年という長い歴史を持つ「画廊喫茶イーゼル」の魅力を探るため、店長の吉田知子さんにお話を伺ってきました。
■画家である伯父の絵を飾る「場」として、喫茶店をオープン。
-「画廊喫茶」と名乗られていますが、確かに店内にはさまざまな絵画が飾られていますね。
「もともと母の兄・・・つまり伯父が画家でした。それで自分の描いた絵を飾る場所として、母に『ギャラリー兼喫茶店をやってみないか?』と誘い、1975年に『画廊喫茶』としてオープンしました。
絵を飾るだけじゃなくて、店内の設計やデザインも伯父の手によるものです。山小屋風にしたいと大工さん2~3人と、長い時間をかけて手作りしました。表の看板の、独特の書体も伯父がデザインして描いたものです。
残念ながら伯父は亡くなりましたが、母は今でも現役で店に出ています」
-すごい伯父さまですね! 確かにお店自体がアート作品のような、独特の雰囲気があります。
「ちょっと独特というか、変わっていますよね(笑) 伯父はもともと画家ですし、木材などを使って何かを作るのも好きだったようです。そんな伯父が特にこだわって作ったのが、道路に面した窓です」
-あの、とても大きな窓ですね。すごくキレイに磨かれていて、ピカピカですね。
「はい、みんなで一生懸命、磨いています。
この窓は、一種の『額縁』になっているのです。外の景色が季節によって変わっていく様子を絵画のように楽しむ、そんなコンセプトで作っています。春、夏、秋、冬と景色が変わっていったり、人が歩いていたり、そういう景色を『絵のひとつ』として捉えているわけです」
-確かに、アルミサッシの窓枠だったら、台無しですね。
「そうですね。ちょっと違うかもしれませんね(笑)」
■お客さまの健康を考えた、ユニークなジャガイモ付きモーニング
-店内の内装などは、伯父さまのこだわりでいっぱいですが、珈琲やメニューについてのこだわりは何でしょうか?
「珈琲専門店としては、やはりサイフォンで淹れた珈琲の味が店のこだわりですね。
オープンする時、母は珈琲についていろいろ勉強したようです。私もこの店を手伝うようになった時に、『コーヒーマイスター』の試験を受けて、珈琲豆や淹れ方について知識を持ったうえで店に出るようにしました」
-最近は、サイフォンで淹れている喫茶店も少なくなってきたようですね。
「サイフォンは昔ながらの方式です。今はペーパードリップが多いですかね。もちろんドリップはドリップで良いところがあります。しかし母がサイフォンでやっていきたいといいますし、私もサイフォンで淹れた珈琲が好きなので、これからもずっと続けたいです」
-珈琲以外の、たとえばフードメニューなどはいかがでしょうか? 「モーニングにジャガイモが付いてくる」という情報もあるようですが(笑)。
「そうなんです、珍しいですよね(笑) 普通のジャガイモを茹でているだけの素朴なものですが。これは母が『この店に来てくださるお客さまには、いつも健康であっていただきたい』という願いをこめ、栄養のバランスなどからビタミンCを摂っていただきたいという理由で、お出しするようになったものです」
-お客さまの健康を考えてというのが、うれしいですね。モーニングはジャガイモの代わりに、ゆで玉子も選べるのですね。
「トーストとサンドウィッチ、ジャガイモとゆで玉子がお選びいただけます。ご注文は、ゆで玉子の方がちょっと多いですが、ジャガイモも根強い人気があります。
それとバナナもお付けしています。これもバランスよく栄養を摂っていただきたいという母の想いからです」
■これまでの伝統、長年培ったものを変えず守っていきたい。
-今、北浜界隈はカフェ流行りといいますか、「映えるお店」として行列のできるカフェなども増えましたね。
「『映える』とか『インスタ』とか、まったく意識していません(笑)。
ウチはマイペースなものでして、母も私も温かみのある喫茶店であることを望んでいます。お客さまとも近いというか、馴染みの方も多いですから」
-「映え」を意識してやって来られたわけではないと思いますが、とっても素敵な『映える』喫茶店だと思います。
「今となっては、できるだけこの状態を守っていきたいと思っています。でも決して、『ゆったり』ばかりではありませんよ。
お昼時などは賑やかで、結構バタバタしています。もちろんゆったり時間を過ごされる方もいますが、お仕事の途中で寄られる方も多いですね。すぐ前が裁判所なので、弁護士さんが打ち合わせに利用されることもあります。」
-最近、大阪も観光客が多いですが、この点はいかがですか?
「増えましたね。写真をお撮りになっている方もいます。今は便利な世の中なので、ネットで検索して来られるお客さまも増えました。
でも、だからといって何か変えようとは思いません。これまでの伝統というか、長い年月やってきたことを、しっかり守っていきたいと考えています」
-先ほど、お母さまはまだ現役でお店に出ておられるとお聞きしましたが・・・
「今、母は月曜日、水曜日、金曜日の午前、店に出ています。月水金の午後と、火曜日、木曜日は私と、交代でやっています。昔からの常連さんが、母を目当てにお越しくださることも多いですよ」
-中之島からほど近い場所ですが、この地域や中之島についての印象は?
「たまたま伯父と母が『ギャラリーが多い地域』ということで選んだこの場所ですが、私はすごく大好きです。梅田からもそう遠くないのに、静かで落ち着いた感じのする地域です。
界隈にはゆったりとしたお店も多いです。都心の割には緑も多いので、本当に心がゆったりとしてきます。
オープンしてもう50年近くなので、店のメンテナンスも大変ですが、これからもできるだけ、このお店の雰囲気を維持していけたらと思っています」
50年の歴史を感じさせる珈琲専門店。シックで落ち着いた雰囲気のあるお店は、すごく居心地のいい空間でした。
しかし会社員や法曹関係のお客さまなどで、賑やかでざわつく日もあるのだとか。それらも含めて、地域に根付いたお店としての『画廊喫茶イーゼル』の魅力なのだと思います。
またいつか、中之島で取材がある時は、休憩がてら珈琲をいただきに寄りたいと思います。
画廊喫茶 イーゼル | |
---|---|
住所 | 〒530-0047 大阪市北区西天満4-6-29 角屋裁判所北門ビル 1F |
TEL | 06-6362-5049 |
営業時間 | 8:00~16:00 |
定休日 | 土曜日・日曜日・祝日 |
アクセス |
○京阪中之島線 なにわ橋駅下車 徒歩約5分 ○大阪メトロ御堂筋線・京阪本線 淀屋橋駅下車 徒歩約8分 |