イタリア半島を「脚」になぞらえると、ちょうど「ふくらはぎ」あたりにあたるのが、アドリア海に面した「マルケ州」。
その地方の郷土料理を提供する料理店は、日本でも数店しかないそうです。
そんな希少なマルケ料理専門店の先駆けであり、大阪で唯一のお店なのが「オステリア・ラ・チチェルキア」。
今日はオーナーシェフである連(むらじ)久美子さんに、マルケ料理の魅力についていろいろお伺いいたしました。
– そもそも連シェフは、どうしてマルケ料理に興味を持たれたのでしょうか?
連シェフ
「もともと料理が好きで、大学を卒業して調理師専門学校に行きました。その後、学校に特別講師として来られたイタリアンの落合務シェフのお店でお世話になりました。その中で地産地消のスローライフに興味を持ったので、本場のイタリアに行ってみようということになり、行った先がマルケだったのです。その当時は、マルケってどこにあるかも知らないほどでした」
– イタリア料理ではなく、マルケ料理のお店にされたのは?
連シェフ
「ひとくちにイタリア料理といっても地方で結構、異なります。パスタだけでも300種ぐらいあると聞きました。
マルケで修行した後、日本でイタリア料理店をしようかなと考えていた時に、当時の師匠から『イタリアにイタリア料理店はない。私はマルケ料理人だから、マルケ料理店をしなさい』といわれまして。それにまだまだ日本ではマルケそのものが知られていないので、マルケ料理専門店を始めることに決めたんです」
連シェフ
「チチェルキアという名前の『豆』があるんです。畑の周囲の畔などに植えられて、以前はよく食べられていたそうですが、最近はあまり食べられていませんでした。でもスローフードやナチュラルフードが注目を集める中で、ヘルシーな食材として、今、また見直されてきた食材です。また、チチェルキアの日本名は『連理草』というのですが、私の姓である『連』と、『理が通じる』という意味が感じられたため、この名前を店名にしました」
– それでは、マルケ料理を紹介していただけますか。
連シェフ
「本当に、イタリアの家庭料理という感じですね。だから家々で少しずつ味や使う食材が違ったりします。牛、豚、鶏の他、ウサギや鴨なんかもよく使いますね。どれも素材そのものの味をじっくりと引き出した、素朴だけど美味しい料理だと思います」
– お店は中之島と靭公園の中間ぐらい。ここを選ばれた理由は?
連シェフ
「この辺りは、イタリアンのリストランテやバールが多いんです。他にも、ドルチェ専門店やイタリアワイン専門店もあったりして、イタリアを感じていただけるお店が集まっています。また、公園も近く、歩いていても気持ちいい地域なんです。気軽に立ち寄っていただけると嬉しいですね。
– 大きなお店にはない、家庭的な雰囲気がいいですね。
連シェフ
「お客さまにも、家にいるような感じでくつろいでいただきたいのです。だから、テーブル席の椅子は、形がバラバラなものをわざと組み合わせました。
それにお客さまと近くありたいので、カウンターの幅をできるだけ狭くして、お客さまと私を遮るものを置かないようにしています」
– 連シェフの想いが、ずっと居たくなるような雰囲気として表現されているようですね。
連シェフ
「そう言っていただけると嬉しいですね。私はできるだけお客さまにゆったりとしていただきたいんです。他のイタリアンのお店で食べた後、『もうちょっと、飲みたいから』といって寄ってくださるお客さまもいますし、ここで食べた後、イタリアンのバールに向かわれる方もいらっしゃいます。どんなお客さまにも、ゆっくり楽しんでいただける店でありたいと思います」
マルケ料理を今回の取材で初めて知りました(申し訳ありません)。でも素朴ながら味わい深いテイストと連シェフの丁寧な調理で、本当に美味しくいただきました。
また「イタリアン」といっても、いろんな種類があることを知り、その奥深さに大きく興味をかき立てられました。
これからも、折々に通いたくなるお店・・・チチェルキアは、まさにそんなお店でした。
(Osteria La Cicerchia)
●日 14:00~23:00
○大阪メトロ中央線・千日前線 阿波座駅下車 徒歩約10分
○大阪メトロ四つ橋線 本町駅下車 徒歩約10分