「えっ、1メニューしかないの?」と驚く方もいるかもしれません。しかし、食材から調味料、料理法まで、ひとつひとつにこだわってできた“優しさあふれる味”と、野菜メインだからこそのヘルシーさが評判となり、お昼は健康志向の女性客、夜は仕事の疲れを癒すかのようなビジネスマンと、連日たくさんのお客さまで賑わっています。
中之島周辺ならではの、静かで落ち着いたロケーションにたたずむ「ロッカ」に、「菜食ごはん」についてのこだわりや、どうしてそんなメニューに辿りついたのかなど、興味深いお話しをお伺いしてきました。
どうしてこのようなメニューになったのか、店主である栄田(えいだ)くるみさんにお伺いしました。
「以前、働いていた時に、ちょっと体調を崩したことがありました。それで体質を改善しようと思い、野菜中心の食事に変えたんです。すると、とても体調がよくなりました。そこで野菜だけのメニューを自分なりにいろいろ勉強し、玄米菜食のお店などで働いたりしました。そのうち自然に、こういう感じのお店ができたらいいなぁ・・・と思うようになりました」
※1:三分(ぶ)つき米
「分つき米」とは、玄米から糠層と胚芽を一定の割合で精米をしたお米のこと。ロッカの「三分つき」の場合、精米率が3割、つまり胚芽を7割ほど残した状態で精米しています。ほぼ玄米に近い栄養ながら、玄米よりもやわらかく食べやすくなっています。
「当時から、シェフと相談してお野菜だけの料理を作ったり、動物性のものを使わないコース(予約のみ)をお出ししたりしていました。その後、オーナーがお店を辞めるということになり、ここで菜食ごはんのお店を始めました」と当時を振り返ります。
ちなみに「ロッカ」という店名はイタリア語で「砦」を意味し、以前の店名をそのまま継承したものです。
「最初の1週間か2週間は、私一人でお店を切り盛りしていたので、とても忙しくオーダーを取りに行くのも大変な状態でした」
そこで栄田さんが考え付いたのが、メニューをひとつに絞ること。お客さまが席に座ったらすぐに料理をお出しできるという、非常に高効率な方法でした。
飲食店にとってメニューを絞り、ひとつだけにするというのは、とても勇気が必要だったはず。しかし、結果的にはこれが正解だったと栄田さんは言います。
「1種類に絞ったことで、お店のコンセプトが明確にできましたね。不安もありましたが、今となっては、ひとつにして良かったと思います」
お店のコンセプト・・・それは体調を崩されて以来、栄田さんの想いでもあった「身体をつくる料理」「命をつくる料理」をお出しするということ。ひとつのメニューだけを丹精こめてつくれるようになったことで、栄田さんは自分の想いを実現させたのです。
ではお料理は、具体的にはどのような内容なのでしょうか?
さらにコシヒカリは、栄養価と食べやすさのバランスを考え、先に紹介した「3分つき米」で提供。またお味噌は、麩、大豆、塩、麦だけで作られた、いわゆる天然醸造のものを5~6種ほどブレンドして使っています。
ただ、調味料も極力少なくしているそうです。というのも、「良い調味料は少量で味が決まるから」(栄田さん)だそうです。
※2:特別栽培米・・・通常栽培よりも化学肥料、農薬などの使用量・使用回数を抑えた農法。栄田さんのご主人の実家では、田植えの前に一度だけ、除草剤を使用するそうです。
「お野菜本来の甘みと旨みを感じていただきたいのです。ただ、少し甘みが必要な場合もあるので、その時は手作りの甘酒を使っています」とのこと。
また、お味噌汁の作り方にも栄田さんの強いこだわりが感じられます。
「薄く切った野菜を重ねて小さい火で1時間以上コトコト煮ます。
そうすると野菜からエキスがでてきます。そこにこぶ出汁を入れてお味噌をといたものがロッカ特製のお味噌汁です」ということで、かなり手間のかかったもので、野菜の旨みがギュッと詰まった、とてもやさしい味わいでした。
しかし野菜メインの料理の場合、メニューを考えるのが大変そう。そう栄田さんに質問すると・・・
「旬のお野菜しか使いたくないのです。だから夏ならどうしてもキュウリやおナスが多くなります。でも毎日お越しくださるお客さまもいるし、“毎日のごはん”というコンセプトで、調味料を変えたり調理法を変えたりと悪戦苦闘しながらやっています(笑) 」
先にも書いた通り、栄田さんの想いは「身体をつくる料理」「命をつくる料理」をお出しすること。中之島の一角で、このような素晴らしい想いを持ってお料理を作ってくれるお店があることに、感謝したいですね。心や身体がやさしい料理を欲しがっている時に、ぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。
以下は、移転前の情報です。
●金 11:30~14:45/18:00~22:30
●土 11:30~14:45(お昼だけ営業)