プログラム参加の前に、淀屋橋odonaへ。旧大阪市立愛日(あいじつ)小学校跡地に建つ淀屋橋odona。その2階にある「i-spot(アイ・スポット)」は大阪市のまちづくりに関する情報発信スペースです。
壁面には懐徳堂や適塾の資料も展示されています。懐徳堂は大坂の町人によって1724(享保9)年に創設された学問所。塾生は武士から庶民まで幅広く、遅刻や早退も自由だったそうです。一方、1838(天保9)年に登場した適塾は、緒方洪庵が開いた蘭学塾。談論風発の気風は幕末の潮流の中で福澤諭吉をはじめとした多くの人材を輩出しました。この懐徳堂と適塾が、現在の大阪大学の源流となっています。
実はアイ・スポットも学び空間のひとつ。懐徳堂で尊重された“学び合いの精神”を受け継ぎ、「大阪大学21世紀懐徳堂i-spot講座」という無料講座が行われています。今回は残念ながらスケジュールが合いませんでしたが、いつか参加してみたいなぁ!
日も暮れてきたところで、京阪中之島線なにわ橋駅の地下1階コンコースにある「アートエリアB1」へ向かいました。
アートエリアB1では「ラボカフェ」という無料プログラムが毎月5~6本、さまざまなテーマで実施されています。本物のカフェのような照明やソファが配されているせいか、通りがかりの人が何だろう?と気軽にのぞき込めるようなリラックスした雰囲気ですね!
「ラボカフェ」は大阪大学が社会のさまざまな組織とコラボレーションしながら、テーマに応じた研究・開発を繰り広げるプロデュース事業。そのプログラムの一つであるオルタナティブカフェは、日々の暮らしを主に文化の視点から見直し、人間の豊かさとは何かを考える公開型ミーティングです。目指すのは大学に属する“専門家”とそこに集う“非専門家”が所属や立場を越えて対話ができるスペース。参加者は自由に意見を交わし、好きなときに入退場できます。ここでも懐徳堂のスピリッツが活かされているようです。
カフェは19:00スタート。この日は「労働と芸術のための時間」をテーマに櫻田和也さんをゲストに迎え、マルクスの「資本にかんする章」の読み解きが始まりました。開始時の参加者は約20名でしたが時間が進むにつれて増え、最終的には30名近くになっていました。正直なところ私には少々難しいテーマでしたが、スタッフの話によると、今回のような哲学・経済の視点のものから裁縫など実践型のものまで硬柔織り交ぜた幅広いテーマが企画されているそうです。
カフェが終了したのは21:00。地上に出ると、辺りはすっかり暗くなっていました。こんな場所で行われるラボカフェって、つくづく面白いなぁと思います。
翌日の夕方は、大阪府立中之島図書館で「能楽講座」に参加しました。大阪郷土資料を保管する中之島図書館。その中には貴重な能楽資料もあり、図書館のスタッフは、それを多くの人に伝え、図書館の新たな楽しみ方を紹介したいという思いがありました。そんなとき、能の普及を目指していたシテ方宝生流能楽師の石黒実都さんと出会い、今回の企画へとつながったそうです。
まずは石黒さんによる、シテ、ワキ、アイといった基本的な用語の解説。その後、いよいよ本物の能面をつけた実演となります。演目「黒塚」の「身を苦しむる悲しさよ」というフレーズを「みをくるしむウー、かなしさよーオーオー」と抑揚をつけてお手本を示す石黒さん。悲しみをたたえた女の視線は空を切り、地団太を踏んで睨みつける。手のひらは眉毛のあたりに置いて、涙をすくうように。その表現ひとつひとつに意味があります。
「能は舞う方も見る方も非日常。それを大いに楽しんでいただきたいです」という石黒さんの言葉が印象的でした。